通訳者Mのブログ

通訳と、人生と。

必要悪だからこそ。

人前に出てもブースにいても不特定多数の人が通訳を聞かなきゃいけないとなると、通訳者はパブリックスピーカーということになります。

 

内容云々は通訳者の専門分野ですが、オーディエンスに対する聞こえ方はアナウンサーやパブリックスピーカーにアドバイスが頂ける分野でもあります。

 

練習して録音してみてもなかなかどこをどのようにしたら聞こえ方が良くなるか、自分一人で出来ることには制限もあります。

 

アナウンサーを対象としたワークショップや英語朗読のワークショップなど探せば都内でも開かれています。一回の出席では自分が話す英語は矯正出来ませんが、出る価値大いにあると思いました。

 

通訳者として、聞いている人が疲れない英語を読むことが職業の方に客観的に指導して頂ける機会は貴重です。

 

通訳者はパブリックスピーカーだと言われればそうだけれど、通訳をすることだけでも一苦労。その通りであります。それでも、何のために通訳をこの瞬間、しているのか考える。聞いている人がいるから、通訳者が必要になる。逆ではないんですよね。通訳を聞きたくなくても元の言語では分からないから、通訳がはいるしかありません。通訳は必要悪です。

 

となったら聞いている人の身になって自分の通訳を省みて改善するのは常識、と西山千先生の御著書にもありました。

真実を

 Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think

3百万人の幼児が5歳になる前に亡くなっている、と聞いたときに、そんなに!と簡単に信じてしまう私だけれど、それでは真実は捉えられませんよ、という本。

 

テレビや新聞、ブログや書籍で情報を大概私たちは受け取る。そのときにはすでにまっすぐ伝わってきていない事実は多い。人間は本来危険に対して敏感である本能が備わっているから、劇的な変化や、まさか!のニュース、そうしたものに目がいきがち。それがあるからこそ報道業界は繁栄しているのだけれど。

 

こちら側の先進国、あちら側の途上国、そういう棲み分けで今の世界は語れないのに、まだ先進国か途上国かの二つのカテゴリがあると思っている人は多い、と。世界経済フォーラムに出席するような方たちでさえ、そうなのだと知って驚きました。そんなことをいったら一般の国民はどれほど真実を分かってこの時代生きているのだろう、そう思いました。

それでいて政治家は本当に正しい政策が打ち出せているのか、と。この人たちが世界を良くも悪くも変えるからです。

 

実は世界は一般に考えられているよりも、うんと改善している!という一安心する書籍です。初等教育を受けている女児は全体の60%もいるのだと知って、本当に嬉しくなりました。

キメずに、分かりやすく

翻訳された書籍を読むといつも思う。

 

熟語が多い。

 

だからなんだ、という方もあるかもしれないけれど、単純に、わかりにくい。スッと入ってこない。本当に深く理解している人の話す言葉は分かりやすい。通訳にもそれは言える。

 

長井鞠子さんがNHK番組の中で

増大する、増加する、よりも大きくなる、増えるといった大和言葉の方が本当はわかり易いはずだとおっしゃっていたのは通訳者であればご存じの方は多いと思う。

 

たとえば

scientific 科学的な

という訳が辞書にはある。

 

でも翻訳されたものを読んでいてつくづく思うのは、品詞に基づいた昔覚えたような訳を省みずに使っていると通訳を聞いている人もわかりにくいんだろうなということ。

take a second before your brain is hijacked by the world outside

社内通訳者だった頃は、一日の終わりに寝る時間までを勉強の時間に充てて、基本的に眠くなったら終わり、という生活を繰り返していました。その日にやらなければならないことが全て終わってからのトレーニングは疲れても寝るだけ、と思って気楽でしたし、朝の起床時間もそれほど早くなかったのです。とにかくあれとこれと、それからここの続きから、、とその寝るまでの時間に毎日詰め込んでいました。

 

 

いまは、仕事に行くまでの朝の時間を活用しています。

夜は、仕事から帰ってきてから詰め込むほど勉強しません。翌日の資料が間に合わず見きれていないページは見ますが、寝る時間になったら止めます。夜やるよりも朝やる方が断然早いんです。たぶん一つ一つに足を取られる時間が脳がフレッシュなので短いんだと思います。これはこうする、ああする、という決断もサクサク進みます。

 

朝は頭もすっきりしていて、一日の、そして自分の人生にとってのプライオリティを考えられます。朝にプライオリティづけをして、一日の自分の行動がコントロール出来ます。Mel Robbinsのプレゼンを見たのがきっかけです。

 

TEDは暇つぶしによく見ますし、NPR TED Radio hour も一つのトピックのもとでインタビューとTEDが織り交ぜてあって飽きません。その中でも本当に気に入ったプレゼンは片手で数えるしかないのですが、Mel Robbinsは見た中で一番気に入っています。You Tubeも多くアップロードされているので、自己向上したいという方は是非。楽しいです。

Mel Robbins: How to stop screwing yourself over | TED Talk


とにかく目の前のトレーニングをたくさんこなす、毎日これらすべてをやると決めてやることも必要な時期はあります。まずは量をこなしてからの質、という議論も、個人的には合っていると思います。ただ、とにかくたくさんこなすことだけでは、いまいちピンとこない時期が私にはあって試行錯誤をずいぶんしました。

 

今はこの朝パターンがうまくハマっている気がします。

パートナー

パートナーというのは一通訳案件に共にアサインされた通訳者のことです。

 

日本語から英語、英語から日本語、どちらにするにしても通訳中は集中力MAXです。同時通訳なら当然ですが逐次通訳でノート取りをしている間も同様です。耳に入ってくる音は出来るだけ100%拾いたいのは通訳者全員同じだと思います。拾えない時ほどストレスなことはありません。

 

達成したい目的は通訳者同士同じですから、助け合いが大事になると思います。

 

特に同時通訳では相手が担当している間は出来るだけ気が散らないようにするべきだとおもいます。紙をめくる音やボールペンのカチカチカチという音は、音声を落とすまいと思って通訳している人にとっては気が散る原因です。なるほど、と自分用にノートを取る時にもパートナーに対してノートをとっているように思われないように気を遣うようにします。以前相手が通訳中に私が自分用にメモを取っていると、焦って見ようとする方もいたので、気を付けようと思ったことがあります。

 

伝えたいことがあっても相手が通訳中なら見れば分かるようなメモで一方向で終わりにするべきだと私は思います。通訳中の通訳者にノートで話しかけて返事を求めたりすれば明らかに通訳はままならなくなります。

 

色々な方からパートナーとの相性のようなことを聴かされてきましたが、あまり大変な思いをしたことがなかった私は重要性を分かっていなかったと思います。

 

でも確かにパートナーとの通訳外でのやり取りが、結構通訳中も反映することを最近肌で感じるようになりました。通訳は個人プレーではなく、チームスポーツです。仕事中はもとよりどんな時も仲間の士気を奪う発言はレッドカードだと思っています。1人1人が確かな腕をもとうという志と今の自分に誇りを持つことは大事なのと同じくらい、この2人で、この3人で今日を成功させようという気持ちやマナーは大切だと思います。

i'm in charge

 

何がいい通訳なんだ、という議論は三人いれば三様です。いい通訳はしたくないと思って通訳する通訳者はいないと思うので、それでいいんだと思います。いろんな解釈があって。こうでなければならないという縛りはいらないし、押しつけるものでもなく。規定されていないし目に見えないもので、言葉だから常に流動的だから当然なのですが。

 

だからこそ常にこれはどうだろう、あれはどうなんだろうと自問自答するのが通訳者だったりします。今日は出来た、とか少し惜しかったという評価はなかなか出来ません。100点満点のうちコレが出来たら各5点と決まっているわけではないし、聞いている人によって通訳をどう評価するかも変わります。つまり決まった尺はないわけです。自分が1番厳しいレフェリーでちょうどいいです。

真剣に面白みを考えたときに。

バイリンガルのお客様が参加者にいると一瞬緊張します。それでも両言語理解しているお客様に喜んで頂くと嬉しいものです。そもそもバイリンガルの方が座ってない会議体の方がレアものですが。

 

バイリンガルの方のいろんな話が聞けるのは仕事のおまけの楽しみの一つです。

語学力を維持する大変さがあると話す方には共感するし、生まれつき二カ国語の環境にいて結婚してもそうだという方にはどっちが第一言語に感じるのかいつも興味があります。外交官ともなると3カ国語を話せて当然という方もいて通訳という仕事の意味や楽しみを考えさせられます。

 

 

聞かされているなあと思ったことがありました。そのお客様は米国からいらした方で日本語も話せる方でした。

仕事で長い時間しゃべっててもダメだ、と。同じ間違いばかりして、同じことばばかり使っている。仕事で話すのとは別に意識して勉強をしなきゃいけない、と。勉強することはとても大事だ。その外国にいるから話せるようになると思ってる人がいるが自分も含めてそれは違う、と。

 

通訳者も全くその通りだと付け加えておきました。

 

通訳活動がルーティン化すること自体は良いけれど、フレッシュな目で文章が聞けない自分がいたりします。当然フレッシュな単語も登場しにくくなります。

そう来たらこう打ち返す、 そっちがそう来ればこう返す、と自分が判断する前に脳みそと口が動いています。

面白くありません。

 

通訳者も一応生きていくために仕事をしているので面白い面白くないをどこまで語るかは十人十色です。

 

面白くなくてもいいかもしれないですがルーティン化した脳みそと口で仕事が片付いているうちは違った角度で成長しません(はい、言い切ります)