通訳者Mのブログ

通訳と、人生と。

悔しいと思えるのはレベルアップの余地があるということ 

悔しい、っていう気持ちってすごく大事だと思います。自分に対する、悔しい、ですよ。他人と比べて悔しい、っていうのは計れない感情的なことなので、対策立ててどうしてだろうって首を捻ってもなかなか出ないです。

 

 

自分に対して悔しい、もう少し出来るはずだって思える限りは、レベルアップ出来るとおもいます。

そして、自分に悔しい、と思ったことに対しては、いつか挽回が出来ます。悔しかったことが出来るようになると小さな自信になります。

 

 

自信も悔しいも、自分がground zeroです。悔しいのままでも、考えてトライして繰り返して自信を自分につけさせてあげるのも、全部自分から。

 

逐次も同時も、その場の理解が大事

逐次通訳もノートをとる時には、何を云わんとしているか分かっていないといけません。つまり聞いてすぐにパッと意味が分かる状態でないと、どんどん遅れてノートを取るのも大変になります。

 

同時通訳もそういった意味では同じで、聞こえてきた英語の意味、何を云わんとしているかがその瞬間掴めないと、どんどん次に聞こえてくる音声に遅れを取ることになるし、最悪、訳を考えている間に置いていかれたりします。

 

耳で聴いたものを通訳するので、「何を云わんとしているか」は2つ要素が絡みますよね。

1聴きとれるか

2理解できるか

 

この二つは別々に鍛えた方がいいかもしれません。

1は、単にリスニング力の問題で、スピーカーが100英語を話していたとします。速い、聴きとれない、などで通訳者の耳に85入ってきたとします。そのうち100%出せればいいですが、それも例えば85%訳せるとします。そうすると通訳を聞いている人の耳には70くらいしか入りません。

音が限りなく全部とれるというのは、自分も楽です。そのためにも様々な英語を聞いてシャドーイングをしていくことか、と。

 

2は、1向けの練習が慣れてきたら意味を分かりながらシャドーイングするとか、サイトラが効きます。耳に比べてゆっくりな目からの情報です。紙に書いてあるものをサイトラしていてその場で意味が取れなければ、耳でとれるわけがありません。

 

英字新聞や英字雑誌を理解できればいいか、と自分にok出したくなります。でも通訳は自分で拾った音で意味を作っていく仕事なので、なにか読みながら難しくても簡単でもサイトラをしていくことも大事です。

ウェイトをどこに置くか

仕事にとにかく入ることで通訳が上手くなる、と思う人もいれば、

仕事にとにかく入ることで自分が忙しくて稼がせて頂いているけど根本的なスキルとしては変わらないと思う人もいます。

 先日もある先輩とお仕事の際にそんな話になりました。

 

仕事に入るときには現場の人たちがどんなことを話しそうか、どんな背景知識を入れておいたら発言の予測が立てやすいか、考えます。クライアントと同じ知識レベルに到達するのは無理でも、出来るだけ彼らの土壌に足を漬け込んでみて、どんな風景が見えるのかを調べたり、聴いたり、します。そうして知識武装したうえで仕事には臨みます。資料だけを読むだけでパンパンな仕事もありますが、資料に書いてあることだけを読んでいても、不十分な気がしています。

 

通訳学校の授業で次週の教材の単語リストをもらって埋めて、さあ次週の授業ではどのくらい出来るだろうか?進級がこのままで出来るか?と考えているのでは不十分だと思います。目隠しされた状態で、つまり全体像がわからない状態で大抵、授業の単語リストも、クライアントの資料も頂きます。目隠しされてどのくらい通訳出来るか、ではなくて、そこからどのくらい視界良好なところまで持っていくか、も通訳の実力に含まれると私は思っています。

 

次週用の単語リストに茂木大臣、USTR、多角的貿易体制、ウルグアイ・ラウンドと出てきたら、調べる・予測できることは山ほどあります。TPPが載っていなくてもこの単語の羅列で出ることは容易に想像出来ます。そしてそれぞれの単語が意味することや、それぞれの歴史、交渉過程、日本政府が推進してきた方向性はどのようなものか、などなどキリがありません。その背景を知ったうえで使われそうな単語を書き出してみたり、関係ありそうなYoutubeを聞いてみたりします。

 

仕事も実際は同じことです。「クライアントが1枚しか資料をくれないから情報量が少なく準備がいまいち、だから出来が悪い」のはクライアントのせいだけではありません。頂いた資料から、見えないところまで推測して準備するのもとても大事なことだと思います。

 

そうして知識武装して、持てうる英語力、日本語力を駆使して仕事が完了します。

 

仕事を繰り返していて通訳には慣れますが、正直、面積の変わらない自分の知っている英語というプールをぐるぐる泳いでいる感覚です。日本語を聞いて英語にしようと思った時に引き出しにはこれまで自分が詰め込んできた英語しかないです。

 

根本的に英語力を上げていく、過去1年とは違う英語力にあげていく、となると自主トレが欠かせないんだと最近改めて思いました。ベテランと言われるまでになれば別だと思いますが、私の感覚ではトレーニングありきの現場、です。通訳として仕事を始めるとカレンダーは埋まってきますがあくまでもトレーニングが主で仕事が副。平日5日間稼働でも、感覚的にトレーニングが主。

 

本当にバタバタしていて逆の時期、「自転車操業」の時期もありました。仕事には特に支障はなかったです。

ただ、自分の英語センスが光らなくなる感覚です。無理やり日本語から英語に訳させられている感覚。自分が相手の意図を理解しながら英語を「話して」いる感覚が薄らぐというのでしょうか。ネイティブだったらこう話すだろう、のセンスが薄らいで、日本人Mが「訳している」状態になる感覚。

 

だからトレーニングを主にして、自分の英語感覚を維持・向上させつつ、かたわらで仕事をする感覚。そうでないとひたすらラット状態で、自分の英語を磨いている余裕が意外とないのです。

それでもそのまま仕事を続けていって、仕事の格が変わっていく人もいるのだろうし、トレーニングなんてしなくても輝いている人はたくさんいると思うので、正解はありません。

warm up before a dive

英語の自主トレーニングだけでなく、情報やアドバイスが欲しいとき、リラックスしたいときにもTED talksは使えます。

 

英語を話すことを職業にしている方は、彼の紹介するトレーニングを試しにやってみることおすすめします。

環境によってはできないものもあると思いますが。 

 

Rrrrエクササイズとリップバイブは、やってから同時通訳に入ると頭の回転に舌がついてきてくれます。

 

業務に必要な知識を勉強したり、基本的なトレーニングをすることは言うまでもないことですけれど。

 

 

Julian Treasure: How to speak so that people want to listen | TED Talk

 

 

パソコンサイトラ

音を出して練習する環境がなかなかない場合も結構あると思います。

 

それでも通訳は音を処理する仕事なので、音(わたしたち日本人の場合は、英語)に触れていないと処理スピードが落ちます。どこかでどうにかして音を聞いて、音を同じ速さで出していく練習というのが欲しいです。 

 

外では、家から最寄り駅、スーパー、ジムなどなどそれぞれその帰り道往復をシャドーイング、同時通訳出来ればそれなりの量が出来ます。私自身机の前に座ってひたすら聴くというのが好きではないので、歩く時、電車で移動する時に、ニュースやTED talksを聞きます。

 

家ではパソコンが使えれば、英字新聞のウェブサイトを立ち上げて、ワードを立ち上げて、同時通訳をしていたらこう訳すだろうという順番でサイトラしたものをタイピングしていきます。アナログ派の私でもここは紙ではなくてパソコンです。速いからです。訳すのと同じスピードで文字におこせます。

これを自分が勉強したい領域の記事でしばらく続けて行うと結構勉強になります。例えば金融でも色々テーマはありますが、今週は債券市場と決めたら債券の記事ばかりサイトラします。そうすると債券市場の様相が分かります。どんな単語がよく使われるかも分かります。

同じことを政治分野でも、宇宙分野でも、自動車、化学、製薬、リテール、やってみると英語と知識の勉強になります。

継続が大事なので何時間もやりません。10分なら10分、7分なら7分と決めて集中して行います。

インプットのたのしさ

野蛮人の読書術から始まって、トランプ・シフト これからの世界経済に備える14のことで今週は終わりそうです。

ある書籍で紹介されていて面白そうだと思った本を読んで、その著者の関連の本を読んで、という風に芋づる式に本を読むのも楽しいです。

 

野蛮人の読書では財界の名だたる方々との対談形式で各々の本の読み方、選び方、おすすめの本が挙げられています。この本を読む前から出口治明氏は読書家ということは存じ上げていましたが、この対談の中で一番印象に残ったのでリサーチして、本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (角川oneテーマ21)を読みました。彼の本に対する世界観を知ることが出来ますし、本を更に読みたくなりました。自分が触りしか知らないことが多すぎるし、一度チャレンジして挫折した古典の大事さも身にしみました。半藤一利氏との対談で明治維新とは何だったのか 世界史から考えるがあります。読み始めて、出口氏が半藤氏の幕末史 (新潮文庫)を読んだことが一つのきっかけでこの対談につながったことを知って、先に幕末史を読み始めました。

 

今読んでいるトランプシフトの著者である塚口氏の本を初めて読んだのは一流の投資家は「世界史」で儲ける。日経の書評欄で知って金融の勉強に、と思って読み始めたのですが歴史のくり返しを例を挙げて分かりやすく書かれていたのでもう一冊、とおもって読み進めてみています。

 

 

読書だけしていれば知識が広がって通訳がしやすくなるわけではありません。知識があっても、スピーカーの英語と日本語を理解して、自らの日本語と英語で再生する力がどのくらいあるかで通訳力は決まると思っています。けれども、普段から自分とは離れた世界や業界のことをよく分からないながらに母語で集中して聴く、読むことに慣れていないと、それを違う言語で理解したり、違う言語で自分が話すことは到底無理な気がします。

 

 

 

最近になって日本語の理解度が深まった気がします。(今でもよく分からないところは戻っては読んだり、普通にします)つまり、通訳という仕事を通して集中力、読解力がついた気がします。通訳を始める前も本は好きでよく読んでいましたが、(興味もない分野の)資料を、通訳者として、読み込んだり人の話を聴くときの集中力は普段とは比になりません。

 

 

インプットをたくさんしたからアウトプット(通訳)が伸びるだけでなくて、

アウトプットである通訳をしてインプット力が伸びるという逆方向。

つまり、「アウトプットのため」があるからインプット力が高まる。

 

インプット力を高めたかったら、読み終わったあとに、聴き終わったあとに、誰かに伝えるつもりで取り組むといいのかもしれないですね。

あがきたいなら通訳中に 

 

諦めるでもなく、開き直るでもなく

愚直に足りなかったところ、間違えたところを確認して

どうすべきだったかを認識して

 

それで、オッケ

 

 

私今の部分間違えて言っちゃった!

今のスピーカー速くてあの部分落としてしまって。。

いやー今のはちょっと無理だな。。

 

イヤホンを外した瞬間きっとそれぞれに思うことはあるけれど、

出来なかったことを告白しても、されても、モチベーションが上がるわけでもなく。

生産的でもなく。

 

悔しいけど通訳は不可逆的作業だから、その瞬間、がんばる。

その瞬間反省して、言葉を足す。

その瞬間自分に発破をかけて、スピードアップする。

 

でも力が及ばなくなってから、あれこれ突然思い出したり、勘違いに気づいたり、そういうものです。

 

のんきにアハハーとするわけじゃないけれど、力が及ばない段階でウンウン悩むのではなくて、次に巻き返しが出来るときに備えて、周到に、前向きに備えるのです。